体育館をのぞいてみると、ちょうど目の前で卓球部が準備してるところだった。
部活があるから行けないって言ってた果穂も、なぜか一緒にいる。
「みんなで来てくれたの?」
太田くんが優しく出迎えてくれた。
「みんなで見学をしても大丈夫かな?」
そう聞き返すとOKって右手で合図をしてくれる。
部長の話しによると、これまで卓球部にはマネージャーはいなかったらしい。
だから、仕事の内容はまだ決まっていなくて
これから一緒に考えていく感じみたい。
いきなりハードなスケジュールを詰め込まれることはないから安心して、ってことだった。
女子卓球部からの視線が少し気になる。
でも、どちらかというと歓迎してくれているような雰囲気。
知っている人はいないけど、敵意のない空気にほっとした。
今日は部長と話して、少し練習を見てから帰ることになった。
「咲良、マネージャーやってみる?」
「そうだね、やってみようか?」
「みんな優しそうだしね。」
「あとさ、1年生のビジュアル強め男子が何人かいたね。」
「そうだよね。」
「じゃあ、明日も行ってみよう。」
マネージャーを引き受けなかったら、3年間話すこともないかもしれない人たち。
そんな人たちとつながりができるなんて。
何気ない毎日が、ちょっと楽しくなりそうな予感。
次の日、部長と太田くんに「入部します。」と伝えてわたしたちの部活生活がスタートした。
もうすぐ引退を控えている3年生、2年生の先輩は8人、1年生が6人。
顧問の谷口先生とわたしたちマネージャー。
このメンバーで過ごす日々が始まった。
部長は2年生で、すでに引き継ぎが終わっているらしい。
しっかりしているように見えるのに、ちょっといじられキャラなのが可愛い。
毎日のメニューは、体育館に集まって柔軟をしてから学校の周りで走り込み。
そのあとに体育館に戻って練習。
わたしたちはまだ何もできないから、お茶の準備をして、みんなの練習を見ているだけ。
それだけなのに、不思議と退屈しない。
みんなが走り込みをしている間、校門のところに座って
目の前を通っていく部員たちに手を振る。
手を振り返してくれるキラキラ笑顔が、眩しい。
今日も同じメニューが淡々とこなされていく。
そんな中、副部長がわたしの隣に腰を下ろした。
「毎日見てるだけで、飽きない?俺、怪我しちゃったから、しばらく見学なの。」
「そうだったんですね。怪我は大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。」
そういって、少し笑ってこちらに顔を向けてる。
そんな何気ない会話がきっかけで副部長と話すようになった。
練習が終わると、いつものように「おつかれさま」と声をかけ合う。
「おつかれさまでした。」
「おつかれ。」
「おつかれさま。」
今日も平和な日で、でも副部長が声をかけてくれたことで、
みんなとの距離が近くなったみたいで嬉しい。
最後に谷口先生から土曜日に練習試合があると告げられた。
相手はわたしの地元にある高校。
わたしたちマネージャーもお手伝いをすることになった。


