夏香の家で高校受験に向けて勉強をしている。
こたつの温もりとミルクティーの甘い香りが時計の針をゆっくり動かしているようで、
受験なんて永遠に来ない気がした。
――どうせ成績、よくないし
志望校を決める時に、自分自身へのマイナスポイントをまたひとつ追加した。
受験戦争は怖いから、安心できる合格圏内の学校を第一志望にしたんだ。
大きな失敗をしなければ落ちることはないはず。
そうすることで、こころに余裕を持てた。
夏香の少女マンガをこっそり拝借。
最近覚えたばかりの北川みゆき。
14歳にとって大人の恋は刺激的。
13歳で初めて恋をした。
人気のある彼だった。
運動が得意で、その競技ではちょっと有名な存在だった。
生徒会でも活躍して。
恋を教えてくれた彼との時間、わたしは優越感に浸っていた。
みんなが憧れている彼を独り占めできていたから。
毎日連絡を取り合って、休みの日には自転車で出かけた。
どこに行ったんだっけ。
近所に新しくできた大きなゲームセンターだったな。
大きなBGMの音とネオンのライトが眩しい、騒がしい記憶。
友達が流した噂ばなしが原因で、あっけなく終わったけど。
キスもできなかった。
大人の恋は甘ったるいキャラメルを包み込んだビターチョコレートみたい。
キャラメルを味わうためにはビターチョコレートが溶ける時間が必要で、
その時間が特別で愛おしい。
名前を呼ばれるだけで耳がくすぐったくて、じれったく触れてくる手に恥ずかしくなって。
それなのにもっと近づきたくなって。
ページの中で繰り返される大人の恋は受験勉強よりずっとわたしを夢中にさせていた。
第一志望の学校にはあっさり合格。
面接官に
「好きな動物は何ですか。」って聞かれて
とっさに「ゾウが好きです。」と答えちゃった。


