修学旅行って、高校生活の最大のイベントじゃない?
みんなでオシャレして、写真を撮って、夜は恋バナして。
行き先は世界遺産で有名な神社と歴史資料館、それに小さなテーマパーク。
副部長と一緒に行けない修学旅行に、正直ドキドキなんて期待していないけど、
それでもワクワクする。
行きの新幹線はわたしの地元にある高校と一緒になったから、知ってる子がたくさん。
お菓子交換をしたり、富士山を見つけて、はしゃいだり。
でも観光バスに乗り換えたら渋滞にはまってしまって、歴史資料館は滞在時間はたったの30分。
本当は2時間以上の予定だったのに。
次の日のテーマパークでも、また地元の高校と一緒になって、
修学旅行らしさをこれっぽっちも感じられないまま帰ってきた。
でも唯一、神社で副部長へお土産でブルーのお守りを買った。自分には色違いのピンク。
どうやって渡すかなんて考えてなかったけど、
ただ、副部長と繋がっていると実感できるものが欲しかった。
先輩たちの最後の大会が近づいてる。
お守りを渡せないまま、時間が過ぎていた。
わたしたちの卓球部は、それほど強くない。
予選通過も難しいかもしれない。
それでも、一生懸命練習をして、最後の大会に向けて気持ちとひとつにしていた。
「今日が終わったら、会う理由なくなっちゃうんだよね。」
今日は美玖におすすめしてもらったアイシャドウでメイクをした。
少しでも可愛いって思ってもらいたくて。
いつもは自分の部活が優先の果穂も、彼氏の最後の大会だから応援に来てる。
結果は残念だったけど、先輩たちの顔は晴れやかで、次のステージを見つめてるようだった。
帰りの支度をしていると、池内先輩が果穂に何か渡してる。
――ジャージ?
わたしたちマネージャーは持っていないけど
部員のみんなは背中に卓球部って刺繍がされたお揃いのジャージを着ている。
「このジャージ、あげるから使って。」
「いいの?ありがとう。」
「今、渡してもいい?荷物が少なくなるからラッキーなんだけど。」
「じゃあ、今もらうね。」
わたしも副部長のジャージちょっとだけ欲しかったな。
でも、果穂は池内先輩の彼女だし。
やっぱり3年使ったジャージは特別なものだから。
しばらくして、先輩たちのお疲れ様会が開催された。
副部長とは引退したあとも、毎日スタンプを送り合っていた。
みんなが思い出を語り合う中、わたしはお菓子を追加しながら静かに笑っていた。
副部長はみんなと話してると思っていたのに、いつのまにかわたしの隣にいる。
「マネージャー、受けてくれてありがとうね。」
「わたしこそ、先輩たちと一緒に部活ができて楽しかったです。」
これが最後になると思って、持ってきていたお守りをそっと差し出す。
「これ、修学旅行のお土産なんです。遅くなっちゃったんですが、もらってくれますか?」
「お土産、買ってきてくれたの?ありがとう、もらっていい?」
「お揃いなんです、色違いで。」
スマホケースに付けてるピンクのお守りを見せると
「おれも付けるよ。」
そう言って、すぐにブルーのお守りを付けてくれた。
池内先輩がやって来て
「副部長、ジャージ渡さないと。」
「ジャージ、使う?寒い日とかあったほうがいいかなって。」
ビニール袋の口を少しあけて見ると、洗濯してされて丁寧にたたまれたジャージが入ってる。
「貸してくれるんですか?」
「めったに卓球部に来ない果穂だけが、卓球部のジャージを持ってるなんてずるいでしょ。」
――そんな理由でも嬉しくてたまらなかった。
「ありがとうございます。」
お守りも、ジャージも宝物になった。
こんな奇跡みたいなことあるんだなって思った。
お互いを思い合ってるってこんな感じなのかな。

