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わたしたちの教室から見える駐輪場。

自転車で登校してくる生徒たちが、窓の外を通り過ぎていく。

副部長と池内先輩はいつも一緒に自転車で登校してくる。

わたしは、ふたりが駐輪場から歩いている姿を教室の窓から眺める、この時間が好き。

教室の横を通る池内先輩に、果穂が「おはよう。」って声をかけてる。

「副部長、池内先輩、おはようございます。」

わたしも果穂の隣にいて、ちょっとだけ緊張しながら挨拶をすると

副部長が返事をしてくれる。

「おはよう。」

「副部長、怪我はどうですか?」

「ありがと、今日から練習に戻るよ。」

「良かったです。」

「うん、あとでね。」

放課後の部活が再開した。

副部長がシューズを履き替えて、練習の準備をしてる。

その姿にたまらなくなって副部長のもとへ駆け寄る。

「走り込みはするんですか?」

「軽く走ってくるよ。」

「無理はしないでくださいね。」

「はーい。」

そのやり取りを見ていた咲良が近づいてくる。

「副部長と仲良くなってきたね。」

「そうかな?」

「ほっぺた、赤くなってる。」

「やめてよ、もう。」

――そう言われると、余計に赤くなっちゃうじゃん。

走り込みが終わって体育館に戻ると、部長が声を上げる。

「今日は久しぶりの練習だから、軽めにやるぞ。」

みんなの返事が体育館に響く。

練習が終わるころ、部長がわたしに声をかけてきた。

「今度の試合の予定、メッセージで送るね。」

「お願いします。」

帰りの電車の中で、部長からメッセージが届いているのに気付いた。

―来月4日、大井高校で試合があるから準備をお願いします。

―分かりました。頑張ってください。

集合時間や必要なものがリストで送られてきた。

これで終わりかなと思ったら、すぐにまた通知が鳴る。

―ちょっと、相談してもいい?

―もちろん、わたしで良ければ。

部長がわたしに相談したいことってなんだろう。

ドキドキしながら画面を見つめてメッセージを待つ。

―バレー部の真由美ちゃんって知ってる?

真由美は話したことはないけど、夏香と同じクラスで、学年イチの女神のグループの子。

猫みたいな、キリッとした目が印象的。

背は高くないけど、スタイルが良くてクールビューティーって感じ。

―はい、知ってます。

―仲良くなりたいんだけど、紹介してもらえないかな?

そっか。

わたしは部長のことを意識していたけど、部長は真由美のことを見てたんだ。

部長の気持ちを大切にしたい。

それはウソじゃない。

でも、わたしは真由美に「部長のこと紹介したいんだ。」って言えるような関係ではなくて。

それに、もし紹介してふたりが付き合うことになったら、後悔してしまいそう。

―ごめんなさい。真由美のことは知ってるんですが、あまり話したことがなくて。

―そうなんだ。ありがとう、こんな話しをしてごめんね。

わたしは部長のことが気になっても何も行動できてない。

それなのに、こんな返事しかできない自分がイヤになる。

部長の力になれないし、自分の気持ちがよく分からない。

でも胸が苦しくなるのだけは分かった。

それでも、わたしは明日になったら何もなかったみたいな顔をして部活に行くんだろうな。

そして部長に会うんだよね。

憂鬱な朝、教室の外を見れば駐輪場から副部長と池内先輩が歩いてくるのが見えた。

窓際で果穂が「おはよう。」って手を振ると、池内先輩が手を振り返す。

副部長も小さく手を振ってる。

わたしは自分の席から、そんないつも通りのやりとりを見ていた。

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