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普段はわたしと咲良、ふたりで部活に行くようになった。

「副部長、怪我はもうすぐ治りそうですか?」

「うん、もうすぐだよ。ごめんね、心配かけてるよね?」

「そんな、謝らないでください。」

「ごめん、ごめん。」

副部長は会話を続けた。

「そういえば、もうすぐ中間テストだけど。勉強してる?」

「勉強ですか?宿題くらいはちゃんとやってますよ。」

わたしは提出物はきちんと期限内にやるタイプ。

後回しにしたり、いきなり答えを写したりもしない。

一度は自分で考えて、ちゃんとやりたい。

「大学受験にも響くから、今から頑張んなよ。」

「ほんとに、ほんとにやっと高校受験終わったんですよ。

もう大学受験のことを考えるのはイヤですよ。」

「行きたい大学ないの?」

「まだなにも考えていないです。副部長は考えてるんですか?」

「指定校推薦って知ってる?」

「知らないです、普通の推薦とは違うんですか?」

中学のときの自分を思い出す。

成績もそこそこ、部活も普通。

だれかに誇れるようなこともしてきてない。

推薦なんて、選ばれた子だけがもらえる特別なチケットだと思ってた。

「俺、行きたい大学があるんだよね。

その学校の指定校推薦が受けたいんだけど、成績が足りないかもしれない。」

「まだその推薦が受けられないって決まったわけじゃないですよね?

きっと大丈夫です。頑張ってください。」

ありきたりな言葉しか出てこなかったけど、それでも本気で思った。

声をかけてくれたあの日から、

部活の合間や帰り道にする何気ない会話が毎日の楽しみになっていた。

背が高くて、制服が似合っていて。

話すときは、低めの声でゆっくりとした口調。

副部長がつくる穏やかな空気の中にいると、

時間がゆるやかに流れていくようで、こころが落ち着くのを感じてた。

土曜日、相手校での練習試合。

副部長はまだ怪我が治っていなくて、練習試合を見学してる。

わたしたちのそばにいて、ルールを教えてくれたり、一緒に準備をしてくれる。

「このあと、駅前のカフェに行こうってなってるんだけど、

マネージャーたちも一緒に行かない?」

咲良とアイコンタクトをして、同時にうなずく。

「行きます。」

「行きたいです。」

カフェでは、試合の話しで盛り上がっている。

同じ1年生の男子たちは、試合の片付けが終わったら帰っちゃた。

今日まで話す機会があまりなかったから、

カフェで話せるかなって期待したんだけど、残念。

今日も部長はいじられキャラらしい。

でも、部長も周りのみんなも楽しそうにしてる。

カフェラテに注いだシロップをストローでクルクルとかき混ぜながら、

ぼんやりとそんなことを考えていたとき。

「ねぇ、連絡先教えて?」

副部長の声。

わたしの心臓が静かに跳ねた。

でも、部活の連絡のためだってすぐに思い直して、スマホを取り出す。

「はい!これでお願いします。」

「ありがと、これ、俺だよ。登録しといて。」

「ありがとうございます。」

と伝える。

そっと部長の方を見た。

連絡先を聞いてみようかな。

断られたら、どうしよう。

迷ったけど、でも勇気を出して。

「部長の連絡先も教えてもらえますか?」

「いいよ。」

部長は笑って、すぐに教えてくれた。

家に帰ってから、スマホに登録したふたつの名前何度も見返す。

副部長の優しい声。

部長の明るい笑顔。

ベッドの上で、ふたりのことを思い出してる。

副部長と話すと、こころが落ち着く。

でも、部長の試合中の真剣な表情、冗談を言って場を和ませる姿を、

どうしても目で追ってしまう。

――ふたりのこと、どちらも意識してる

そんな自分に気づいた夜だった。

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